スポットライト2017年7月4日

指揮者をさせていただいておりますと、
有難いことにスポットライトを浴びます。
比喩的にだけではなく、物理的にも。

物凄く眩しいので、視力を奪われます。
光の中からは何も見えなくなるのです。
客席の様子が全く分かりません。

挨拶が終わると楽団の方を向く、
つまりお客さんにはおしりを向けてしまうので、
お客さんがどれくらい客席を埋めてくださっているのか分からないまま、
本番の指揮に突入することになります。
もちろん拍手の音は耳にしているので、
盛況か、寂しいのかは、何となく分かります。
が、視覚的には殆ど見えていません。

本番の緊張感はあります。
が、お客さんの姿が見えていないおかげか、
ほぼ平常心で音楽を進めていくことができます。

かつて奏者だったときは、
ずっとお客さんの顔が見える中で演奏していて、
緊張しっぱなしでした。

背中にお客さんを抱えている責任感がなくもないのですが、
やはり「見えていない」ことはプレッシャーから解放させてくれます。

ただ、スポットライトにはずっと違和感を覚えています。
指揮者が挨拶するたびにスポットライトを当てる演奏会、
私は殆ど見たことがありません。

照明の明暗があって指揮者の挨拶が分かりにくい第2部でならまだ分かりますが、
ステージが全照状態である第1部でのスポットライトは必要でしょうか?
指揮者が挨拶する様子はスポットライトがなくても分かると思うのですが。

さらに言えば、ソリストへのスポットライトも必要でしょうか?
1曲演奏したあとは、
第1部であれ第2部であれ、
だいたい全照になっていると思われます。
さあ、立って挨拶しましょうとなったソリストが、
スポットライトがなければ客席から分からないでしょうか?