東京佼成ウインドオーケストラ第136回定期演奏会を聴く2017年11月24日

11月23日、勤労感謝の日。
若手社員が休日出勤を志願してくれたおかげで、
思いがけず休めることになり、
日帰りで東京へ行ってきました。
池袋の東京芸術劇場で開催される、
東京佼成ウインドオーケストラ第136回定期演奏会を聴くためです。

雨の中の東京行きかと思いきや、
すっきり晴れました。
これまで何度も新幹線に乗っていますが、
浜名湖から富士山を見たのは初めてです。
(そもそも、見えるとは知りませんでした)

今回の指揮は飯森範親さん。
プログラムは、
コンサートマスター田中靖人さんのソロによるコンチェルト、
クロード・スミスの『華麗なる舞曲』、
高橋悠治さんへの委嘱作品が世界初演されるなど盛り沢山。
開演前から会場の熱気がいつもと違います。

1曲目はクロード・スミス作曲『バンドへの贈りもの』。
アメリカの高校の委嘱作品ということですが、
こんなに音が動き回る曲が高校の委嘱とはビックリです。
ですが、TKWO は、いともあっさりと演奏してしまいます。

2曲目はポール・クレストン作曲『アルトサクソフォン協奏曲』。
とても有名なコンチェルトで、
かつて前任のコンサートマスター須川展也さんのソロで聴いたことがあります。
今回のソロは前述の通り、
現在のコンマス、田中靖人さんです。

とても素晴らしい演奏!
最終小節の和音が鳴り響いた瞬間に「ブラボー!」を発したのは、
私の5列前に座る須川さんでした。

3曲目はクロード・スミス作曲『華麗なる舞曲』。
のっけからテンポの速さに圧倒されました。

この曲を日本で始めて演奏したのは、
おそらく我が母校です。
高校生らしい、溌剌としたハイ・テンポでしたが、
今回の TKWO はそれを上回る速さ。

飯森さんが全くタクトを緩めようとしません。
例えば、
16分音符が連続するパッセージの途中、
8分音符が何個か挟まると、
途端にテンポ感が緩むものです。
自然とそうなるのです。
が、飯森さんはあくまでも緊張感を持続させようとします。
プレイヤーの皆さんも必死で喰らいついてきます。

まるで F1 パイロットが、
マシンを限界ギリギリまで追い込んでいるかのようです。

万雷の拍手が鳴り響き、
これですべてのプログラムが終わったみたいでしたが、
あくまで第1部の終了。
休憩後、第2部に突入です。

4曲目は TKWO 委嘱作品の世界初演となる、
高橋悠治さん作曲の『透影』。
「すきかげ」と読むそうです。

現代音楽で、私には難しかった。
興味深いとは思うのですが。。。

演奏後、飯森さんに手招きされて客席から舞台に上がった高橋さん。
80近いご高齢だからか、ひょこひょこ歩く姿がとてもチャーミング。
スーツを着るでもなく、おそらく普段着であろうラフな着こなしが逆に好印象でした。

ラストの5曲目は、
ショスタコーヴィチ作曲『バレエ組曲「ボルト」』。
私は初めて聴きます。

ここでの飯森さんは『華麗なる舞曲』とは違い、
テンポを追い込んでいきません。
割と自然な流れに任せているようです。

演奏会を聴きに行っても、
タクトを持つ指揮者の「手元」がどうなっているのか、
よく分かりません。
当たり前のことですが、
指揮者は客席に背中を向けているからです。

が、飯森さんの動きはダイナミックで、
下手側や上手側にハッキリ向き直って指揮する場面が多々あります。
そんなときに手元がよく見えて、
とても勉強になりました。

おそらくこの定期の模様は、
ライブ録音盤が発売されるのではないかと思います。
最近の TKWO は、
セッション・レコーディングよりもライブ盤に力を入れているようなので。

CD あるいは DVD、はたまた BD などをゆっくり見聴きすると、
生で見聴きしたそのものまでは感じ取れないかもしれません。
そんなことを差し引いても、
この日の演奏は凄かったと断言できます。