音源を頼りにするのではなく2019年2月12日

練習中の楽曲の、参考となる音源。
若い頃は、よく聴いたものです。

特によく聴いたなぁと思うのが、
ジェイムズ・バーンズ作曲の『交響的序曲』。
これまでに2度演奏したことがあるのですが、
1回目に取り組んだのは私がまだ大学生だったか、
社会人になりたての頃。
いずれにせよ、若い頃、です。

家では CD を、
車の中ではカセットテープに録音した音源を、
飽きることなく聴きまくりました。
演奏はバーンズ自身の指揮した東京佼成ウインドオーケストラ。
この時は、この音源しかなかったと思います。

当時、せせらぎにはテューバ奏者がおらず、
毎年エキストラを頼んでいました。
『交響的序曲』演奏時には大学生の I 君に来てもらいました。
嵐山の方からスタジオに来てもらうのが大変で、
よく送り迎えしたのですが、
その車中でカセットに落とした『交響的序曲』を聴いていると、
I 君曰く、「せせらぎの演奏とそっくりですね!」

私は「あっ」と思いました。
せせらぎの演奏が東京佼成ウインドオーケストラにそっくりになっていたんです。
プロの演奏に近づけて良かった、ということではありません。
私が、たった一つしかない『交響的序曲』の音源を聴き過ぎたせいで、
せせらぎのオリジナリティを表現できていないのです。

大きなショックでした。
反省しました。

それからは、出来るだけ多くの音源を集めて聴くようにし、
一つの音源しか知らないということのないように努めました。

が、もし、今取り組んでいる楽曲が、世界初演の委嘱作品だとしたら?
音源など、存在しないのです。
いや、コンピュータの発達した現代ですから、
パソコンで再現した音を聴くことが出来るかも知れません。

だからと言って、頼ってしまっていいのでしょうか?

今の私は、取り組んでいる楽曲の音源を極力聴かないようにしています。
音源がある場合は全く聴かないというのではありません。
参考程度にサラッと聴くことはあります。
が、聴きまくることしません。

楽譜には多くの情報が詰まっています。
それを頼りに曲作りしたいのです。
音源を頼りにするのではなく。

先日の合奏で、
『バイバイ・ヴァイオレット』の音源を聴いたことがないし、
今後も聴くつもりはない、
と申しました。
この曲が好きとか嫌いとかからの発言ではありません。
音源を頼りに曲作りしていくつもりはない、
スコアと格闘しながら追求していきたい、
という意思表明です。

もしかすると、
今でも音源を聴きまくっている奏者の方がいるかも知れません。
そこに音源があるのに、
聴くなとは申しません。
参考程度ならいいでしょう。
が、聴きまくるのはそろそろやめにしませんか?