暗譜(続き)2022年7月10日

暗譜で指揮する大きなメリットは、
見台を置かないで済むので、
目の前の空間が広々使えることです。

タクトの打点の高さは、
概ね腰の辺りだと言われます。
それより下の空間を使うことはないのだと。

考えてみたら当たり前で、
腕の長さからしても、
打点を足首の高さにするなんてこと、
あり得ませんから。

ってことは、
見台があってもなくてもタクトの下限点はほぼ同じなんですが、
やっぱり見台がない方が腕が縮こまらなくて動かしやすいんですな。

というのは表向きの理由。
やっぱり暗譜振りってのはええカッコできますからな。

今回、暗譜をやめたのは、
覚えるのが苦しかったからです。
「苦しいけど楽しい」なんていうのは本音じゃありませんな。

また、
暗譜でやると、
その場その場で生きている音楽に感覚を研ぎ澄ませるのではなく、
「まずこうして、次はこう、ほんでもって … 」
と段取りばっかり気にする自分がいるのです。

そして、
演奏会が終わってもヘトヘト感の抜けない自分がいます。
しばらく何もかも放り出して休みたいとしか考えられなくなる自分。

そんな自分が嫌で、
暗譜をやめてみたら、
「忘れたらどうしよ」と心配ばかりしている自分ではなく、
本番で鳴っている音そのものをよく聴いている自分がいました。

演奏会後も疲れ切ってはいなくて、
次のことにトライしてみたいと意欲的な自分がいました。

野外演奏などで暗譜が必須となる場合は別ですが、
定期演奏会はちゃんとスコアを見台に置いてやるのが合っているように思いました。