100,000年後の安全2012年12月20日

今年も押し詰まってまいりました。
「今年はどんな映画を観たかなぁ…」
と思って映画の半券ノートをめくっていました。
(どんな映画を観たか忘れてしまうので、
昨年から半券を貼るスクラップ帳を作ったのです)
すると、今年ではなくて昨年ですが、
京都シネマで観た『100,000年後の安全』の半券が目にとまりました。

原子力発電所の安全対策についての議論、
よく耳にします。
存続させるにせよ廃止するにせよ、
現在進行形で原発は存在しているのだから、
その安全性を確保するのは当然のことです。

しかし、「核のゴミ」についての議論をあまり聞きません。
『100,000年後の安全』は、
もしも人類の子孫が、
あるいは未来のあらゆる生命が、
そして地球上に存在するあらゆる事物が、
現在の人類が廃棄した「核のゴミ」に被爆しない保証はあるのか?
を問いただすドキュメンタリー映画でした。

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核のゴミをどうやって廃棄するか?
いろんな方法が映画の中で提示されますが、
驚いたのはロケットで宇宙に向けて廃棄するやり方でした。
永遠の彼方へ飛ばしてしまうのか、
太陽に向けて飛ばすのか忘れてしまいましたが、
とにかく「臭いものは遠くへぶっ飛ばす」やり方です。

しかし、ロケットが打ち上げの際に爆発したら?
放射性廃棄物が広範囲に撒き散らされてしまうのです。
これは危険極まりないということで凍結されたそうです。
(でも、遠い将来、もしも「宇宙へ行くエレベーター」が実現したら、
宇宙への廃棄が可能となるかもしれない、
という提示もあったような…)

いずれにせよ、宇宙に捨てるなんて方法、感心しませんな。
空に吐いた唾が顔にかかるのでは?
太陽に捨てるとして、悪影響はないのでしょうか。
そもそも、ゴミ捨てのマナーとしてなってないと思います。

いろいろな提示があったと思いますが、
結局は地下深くに埋めてしまうのが一番安全だと言われている、
と紹介されました。
いわゆる「地層処分」という奴です。

フィンランドで核のゴミの最終処分地が決まり、
地下保管施設の建設が進んでいるそうです。
その施設を「オンカロ」と呼びます。
もちろん日本語ではないのですが、
「オン」という発音が「隠」という漢字を連想させ、
不思議と記憶に残ったのでした。

仮に、今後、原発を襲う地震も津波もテロも起こらず、
原発での放射能漏れ事故が起きないとしましょう。
そして、そのまま世界中の原発がすべて安全に廃炉され、
すべての放射性廃棄物が埋め立てられたとしましょう。
ああ、よかったよかった、ではないのです。
地層処分は本当に安全なのでしょうか。

放射性廃棄物が無害化するのにかかるのが10万年だそうです。
地下保管施設は10万年維持できるのでしょうか。
廃棄物が漏れ出すことはないのでしょうか。
いまだかつて、
人類は10万年もつ建造物を作ったことがないのです。

そこに放射性廃棄物が埋まっていることが、
未来の人類に正しく伝わるでしょうか。
核廃棄物のマークの意味が「危険」を表すということが伝わらず、
現代人が古墳を発掘するように、
未来人が好奇心の赴くまま核のゴミを掘り出してしまったとしたら?
映画は、そこで終わりました。

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私は数年前に観た『不都合な真実』とともに、
この映画のことを反芻するようにしています。