名脇役2020年11月8日

私はホルン奏者の出です。
ホルンを吹く喜びは、
3人ないし4人のホルン奏者で作った和音がピタッとはまったとき。
得も言われぬ快感です。
私たちの和音に乗っかって旋律を歌ってくれたり、
私たちの和音をベースラインが支えてくれたりするのを感じると、
自分たちの役割を果たせてよかったなと思います。

音にも「層」があって、
目立つ音もあれば、
裏方に回って目立ちにくい音もあります。
ホルンはどちらかと言えば後者。

けれども、
そんなホルンでもソロを担当することもあれば、
全員で唸りを上げることだってあります。
役割はいろいろ変化するものです。

練習や本番の録音を聴いて、
いつも割と目立つ楽器が裏方に回る場面で、
「自分の音が全然聞こえない」と、
いつも目立つ楽器担当が文句を言うことがあります。
が、そんなことはないのです。
聞こえにくくなったかも知れませんが、
聞こえないことはない。
必要でない音などないのです。

※※※

多くの作品でバイプレイヤーを務めてきた宇野祥平さんが、
『罪の声』で最高の脇役振りを発揮されたのを観て、
脇役ホルンのことを思いました。

この映画、
間違いなく小栗旬さんと星野源さんが主演の映画です。
脇を固めるのも贅沢な俳優陣なのですが、
私が最も感銘を受けたのが宇野祥平さんの演技だったのです。

宇野祥平さんが出演する映画。
これまで何本も観てきました。
どの作品でもなくてはならない名脇役振りなのですが、
『罪の声』ではそれがより一層抜きんでていたと思います。

吹奏楽や管弦楽におけるホルン群の和音と同じだと感じたのです。