テンポ442014年4月13日

テンポ(楽曲の速さ)を表現する方法として、
“ Allegro ” とか “ Moderato ” といった速度標語が楽譜に書いてあることが多いです。
パート譜はこれで終わりというケースも多いですが、
指揮者が見るスコアには、さらに細かく、
基準となる音符を1分間に?個演奏するように指示してあることが殆どです。

例えば、3/4拍子ならば、
基準となる音符は分母に書いてある「4」、すなわち4分音符。
4分音符を1拍とし、それが1小節の中に3個あるのが「3/4」拍子です。

で、4分音符=60と指示されていれば、
1分間で60カウントするテンポが要求されているのです。

1秒間に1拍とは分かりやすい。
ということで、私たちが合奏スタイルでの基本練習を行う際も、
4分音符=60を採用することが殆ど。
(私は勝手に「60のテンポで練習始めますよ」などと言っています。
 「?のテンポ」という言い方が世にあるのかどうか知りませんが…)

教則本なんかでも、
4分音符=60~120で稽古せよと指示されているのをよく見ます。
ゆっくりから稽古していって、倍のスピードでできるまできっちりやれ、
という意味なのでしょう。

「60のテンポ」というのは割とゆっくりのテンポなので、
基礎をさらうにはもってこいのテンポだと思います。
とはいえ、これが最も遅いテンポではないのです。

以前、『吹奏楽のための交響詩「ぐるりよざ」』を演奏した時のこと。
第2楽章 “ 唄 ” は、
3/4拍子、4分音符=30という超スロー・テンポで始まります。
2秒でやっと1拍なのです。

最初の15小節間、「30のテンポ」が続くのですが、
ここは龍笛のみのソロ(せせらぎではピッコロで代用)。
M井さんには大変なご苦労をおかけしましたが、
ソリストに任せ、私はタクトを振りませんでした…

続く16小節目から34小節目までは「48のテンポ」。
いよいよ合奏区間に入るのでタクトを振るのですが、
とてもゆっくりで凄く苦労しました。
指揮は、速く振るほうが楽なのです、私にとっては。

自宅で行う指揮の基本練習。
それまでは「60のテンポ」で行っていましたが、
『ぐるりよざ』を機に「48のテンポ」に変更しました。

今回、アルフレッド・リード作曲『第5組曲』を演奏しますが、
第2楽章 “ サラバンド ” は、
これまた3/4拍子ですが、
テンポはさらに落ちて「44のテンポ」なのです。
指揮の個人練習のテンポを「44」に落としたのは言うまでもありません。

さらに、4月11日(金)の合奏では、
基本練習のテンポを「44」にさせていただきました。

私自身がこの超スロー・テンポに慣れていきたいのは当然なのですが、
プレイヤーの皆さんにも「44のテンポ」を体感していただきたいのです。
おそらく、ここまでの遅さを普段の練習に組み入れることはないでしょうから。

遅いテンポの維持はとても難しいのです。
最初、メトロノームで「44」を確かめて、
そのあとメトロノームを止めてタクトを振ってみます。
しばらく経ってからテンポを確かめるためにメトロノームを動かすと、
私のテンポは上がってしまっていることがしょっちゅうです。

プレイヤーの皆さんも、試しに『第5組曲』第2楽章を歌うなり演奏するなりしてみてもらえば、
いかにテンポ・キープが難しいかわかると思います。

演奏会まで、「44のテンポ」による基本練習を何度か組み込んでみたいと思っています。