『メイン・ストリートで』と、寅さん2016年1月9日
数日前に『 THE 課題曲』という CD を聴いていました。
毎年、4~5曲選定される吹奏楽コンクールの課題曲。
コンクール出場団体はその中から1曲選んで演奏します。
これまでに夥しい数の課題曲が作られてきた訳ですが、『 THE 課題曲』には、そのうちの11曲だけが、それも1970~80年代の作品に絞り込んで収録されています。
私自身、演奏したことのあるものもあるし、未経験の曲もあります。
ただ、どの作品も懐かしく、耳からスンナリ入ってくる感じ。
課題曲が発表されると同時に、そのデモ演奏も発表されます。
プロの吹奏楽団による参考音源。
私たちアマチュアはそればかり聴いて、演奏が画一化される傾向にあります。
ですから、チラッと聴くのはいいけど、聴きまくるのはいかがなものか、と。
(今でも参考音源は発表されているのでしょうか?)
今の私にコンクールは関係ありませんから、参考音源ばかり集めた CD を、『 THE 課題曲』に続いて聴いています。
殆どが東京佼成ウインドオーケストラの演奏ですが、年によったら航空自衛隊や陸上自衛隊の音楽隊だったり。
1975年から1992年にかけての課題曲が、73曲収録されています。
録音が古くて、逆に新鮮に聴こえたり、なかなか面白いです。
『 THE 課題曲』にも入っていたのですが、岩井直溥さんの『ポップス描写曲 “ メイン・ストリートで ” 』。
演奏したことのない作品ですが、何度も聴いたことがあります。
にもかかわらず、今回初めて思ったことがあります。
それは、映画『男はつらいよ』の音楽と相通ずるものを感じたことです。
二日に観た『男はつらいよ寅次郎恋やつれ』。
吉永小百合さん演じる歌子は、厳格な父(宮口精二さん演じる作家・高見)の反対を押し切り、半ば恋人と駆け落ちするような形で東京から出ていきます。
これが第9作『男はつらいよ柴又慕情』で、第13作『寅次郎恋やつれ』はその数年後のお話。
津和野で歌子と偶然出会った寅さん。
話を聞くと、結婚した彼は病死し、彼の故郷である津和野の実家で肩身狭く暮らしているとのこと。
そんな歌子を気にしつつ旅を続け、葛飾柴又の「とらや」に戻った寅さん。
ああ、歌子さんはどうしているんだろう、と思っているところへ歌子が訪ねてきて …
父娘の複雑な感情の糸は絡まったままなかなか解けないのですが、なんやかんやあって、父のほうから「とらや」を訪ねてきて、ようやく互いのわだかまりが解けて …
父と娘に気付かれないよう、背を向けた寅さんが肩で泣く名シーン。
ここで流れる音楽が、『メイン・ストリートで』の、夕暮れを表現したと思える場面と相通ずる空気だと思ったのです。
『メイン・ストリートで』が課題曲だった1976年と言えば、『男はつらいよ』は半年に一作公開という全盛期。
時代の空気というものかも知れませんな。