浄瑠璃寺2011年10月11日

巨大なトランクを引きずっているあの4人組を追い越す。
お笑いもいいけど、このままではせっかくの参拝が台無しになりそうなのだ。

とても静かな山里である。
背の高い樹木に囲まれているため、
お寺以外の人工的建造物が全く目に入らない。
素晴らしい環境だ。

が、境内からなんとなく嬌声が響いてくる。
山門を潜ると、東京から修学旅行にやってきた女子高生たちであふれていた。

浄瑠璃寺は、浄土式庭園の典型例だそうだ。
中央に池を配し、
池の西側に阿弥陀如来を配置する本堂があり、
池の東側に薬師如来を祀る三重塔がある。

今、女子高生たちは本堂の前に集まっている。
逃げるにしかず、ということで先に三重塔を目指した。

ここへ来て初めて知ったのだが、
割と小ぶりなこの三重塔、国宝なのである。
女子高生から逃げて先に三重塔に来ただけだったのだが、
実はこれが正式な参拝方法だった。
というのは、まず東の薬師如来にお参りし、
その場で振り返って池越しに西方の阿弥陀如来にお参りするのが
本来の礼拝なのだそうだ。

いやはや、女子高生たちに感謝である。

彼女たち、今度は三重塔に向かってくる。
(つまり、参拝の順序が逆である)
私は入れ替わりに池向こうの本堂にまわった。

せっかくなので本堂の中に入って、ビックリ仰天した。
平等院鳳凰堂では見上げるような阿弥陀如来坐像に圧倒されたのだが、
浄瑠璃寺では九体もの阿弥陀如来像と対面させていただいたのだ!
やはり国宝である。

普段呑んでばかりで煩悩の塊である私だが、
この日ばかりは心洗われる一日となった。

静かな気持ちで本堂の出入口に戻ってくると、
そこには、かのトランクが鎮座ましましている。
思わずクスッとした。

さて、浄瑠璃寺の池の形状は、
平泉の観自在王院の池の形状とそっくりだと物の本に書いてあったのが、
浄瑠璃寺を訪ねてみたかった理由である。
観自在王院は今では遺跡となってしまっている。
同様の浄土式庭園が現存している浄瑠璃寺をこの目に焼き付け、
予習しておきたかったのだ。