カウンター2012年9月2日

先日、珈琲・吉田屋のマスターがお亡くなりになりました。

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吉田屋というのは、京都・先斗町(ぽんとちょう)の北のはずれにある喫茶店です。
今ではどこもかしこも「カフェ」がもてはやされていますが、
吉田屋はあくまでも「純喫茶」です。

大学1年生のとき、友人に連れられて始めてこのお店でコーヒーをいただきました。
吉田屋はエスプレッソ・コーヒーの専門店なのです。
また、カウンターしかない、まるでバーのような造りです。
私はその雰囲気がとても気に入り、数日後、アルバイト希望で再訪しました。
3人いらっしゃる大学4年生のアルバイトが卒業で抜ける半年前というバッチリな時機で、
即採用ということになりました。

大学の授業を午前中に固め、
大急ぎで昼食を済ませたら吉田屋へ向かいます。
午後2時から夜の10時まで、アルバイト一人に任されるのです。
コーヒーを淹れ、
洗物をし、
料金を頂戴し、
お客さんとしゃべる。
カウンターの中で一人で切り盛りするのです。
私は週に6回、アルバイトに入りました。
青年期の私を鍛えてくれたのは、
間違いなく吉田屋と、マスターでした。
そして、酒を呑むときもカウンターが好きな私の素地も、
この頃作られたのだと思います。

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大学卒業後も、ちょくちょくコーヒーを飲みに通いました。
特に、夜勤明けで映画を観たあとなど、
吉田屋で一服してから帰る、という習慣でした。

が、昨年の暮れに行ったっきり、訪れていませんでした。
夜勤明けで映画を観たあと、
昼間からアルコールを飲める店にいくようになっていたのです。

まさかマスターのご病気がこんなに悪かったとは…
あまりの不義理に、申し訳なさでいっぱいです。